自分のお店を持つ前に、考えておきたい5つのこと
続くお店をつくるために大切な視点とは?
「いつか、自分のお店をもちたい」
そう語る料理人やサービスマンに、これまで何人も出会ってきました。
実際に夢を叶えて開業した方もいれば、思いをかたちにできたものの、さまざまな理由で店を閉じた方も少なくありません。
美味しい料理をつくれることと、続けられる飲食店をつくることは、似ているようでまったく別の力が必要です。
このコラムでは、飲食店の立ち上げや経営支援に携わる立場から、“お店を持つ前に考えておきたい5つの視点”をご紹介します。
1. 「誰に、どんな時間を届けたいのか」を明確にする
飲食店は単に料理を提供する場所ではなく、体験や時間も提供する場所です。
お客様にどんな気持ちで帰ってほしいのかを考えておくことが、すべての設計の起点になります。
例えば、
・仕事帰りの30代が、気持ちを整える静かなひとときを。
・地域の家族が、気取らない特別感を味わえる時間を。
・観光客が、その土地の文化に触れられる食体験を。
こうした“思い”があってこそ、料理、価格、内装、照明、サービスのトーンが整い、店の世界観が生まれます。
2. 自分の「強み」と「好き」を知る
あなたが得意な料理は?
どんなお客様と関わるのが心地いい?
どんな働き方を望んでいますか?
「らしさ」のある店は、お客様の記憶に残ります。
それは特別な技術でなくても構いません。
自分の「好き」や「得意」を丁寧に見つめ、それを軸にすることで、無理のない運営とお客様との共感が生まれます。
3. 収益構造を避けずに設計する
「どんな店をやりたいか」と同じくらい、「どうすれば利益が出るか」は重要です。
理想だけでは続きません。数字は夢を支える土台です。
・月の売上目標と必要経費の把握
・原価率や人件費のバランス
・ランチやテイクアウトなど複数の売上導線
・閑散期対策やメニュー単価の設計
数字に向き合うことは、続く店をつくる第一歩でもあります。
4. “余白”を前提に考えておく
開業後の数ヶ月は、ほとんどの方が余裕が無く全力疾走になります。
でも、それがいつまでも続くと、疲弊や人手不足が理由で店が続けられない原因となってしまったり、モチベーションの低下につながることも。
だからこそ、最初から「続けられる運営の仕方」を意識しておくことが大切です。
・定休日や仕込みのリズムをつくる
・無理のないメニュー数に抑える
・ひとりで抱え込まない仕組みを準備する
“続ける工夫”は、お客様にとっても優しく居心地の良い空間づくりにつながります。
5. 「地域とのつながり」を意識する
今、飲食店には“場”としての役割が求められています。
地元の野菜を使う、近くの人と挨拶を交わす、地域イベントに参加する。
小さな積み重ねが、地域との信頼や支え合いにつながります。
「地域と一緒に育つ店」は、景気や流行に左右されにくく、長く愛される存在になります。
最後に「お店をつくるということ」
お店を持つことは、自分の世界をかたちにすることでもあります。
だからこそ、焦らず、自分の声に耳を澄ませてください。
何を大切にしたいのか、どんな未来を描きたいのか。
明確な正解はありません。
でも、事前に丁寧に“考える”ことで、選び取る力が育ちます。
あなたがつくるお店が、
誰かの記憶に残り“必要とされる場”となるよう願っています。