たべるデザインのコラム

料理人と生産者

料理人が社会課題に向き合うとき-食の力でつなぐ物語-

料理人の役割は、ただ「美味しい料理をつくる」だけではありません。
近年、食を通じて社会課題に取り組む料理人たちの存在が、各地で注目されています。

フードロス、子どもの貧困、孤食、高齢化、地域資源の未活用…。
“食”はこれらの課題と深く結びついており、料理人だからこそできるアプローチがあります。

この記事では、料理人がどのように社会課題と向き合い、食の力を使って人と地域をつなぐストーリーを生み出せるのかを、沖縄の事例や実践的な考え方を交えてご紹介します。


食は、社会と人をつなぐ「場」をつくる

料理とは、ただの栄養摂取ではなく、「誰かと共に過ごす時間」「想いを受け取る体験」です。
だからこそ、“食の場”には、社会のさまざまな断面があらわれます。

  • 子どもが一人でごはんを食べている
  • 高齢者が調理できず、コンビニで済ませている
  • 経済的理由で朝食を抜いている家庭がある
  • 地元の食材が活かされず、廃棄されている

これらの状況に気づけるのは、「食」を真ん中に置いている料理人だからこそ。
社会と個人の距離を“料理”で縮めることができるのは、現場に立つ料理人の特権でもあります。


沖縄から考える、料理人にできる食の社会貢献

沖縄でも、さまざまな食をめぐる社会課題が存在します。

  • 子どもの貧困率の高さ(全国平均を上回る)
  • 食材の輸送依存と価格高騰
  • 離島・高齢者世帯の買い物困難
  • 未利用資源(規格外野菜、未利用魚)の活用不足

こうした課題に対して、地域の料理人やフードコンサルタントが、持続可能で実践的な取り組みを始めています。

例:

  • 地元の生産者と協力し、未利用野菜をスープにして子ども食堂へ提供
  • 福祉施設と連携し、規格外のパンや弁当を地域の高齢者へ届けるプロジェクト
  • 未利用資源を活かしたお惣菜・瓶詰め商品を観光客向けに開発

いずれも、料理人の「技術」だけでなく、「想い」や「つながり」が土台にある取り組みです。


料理人が社会課題に向き合う3つの視点

料理人として社会と関わるうえで、意識しておきたいのが以下の3つの視点です。

1. 素材の“背景”を見る目を持つ

食材の裏には、生産者の暮らし、自然環境、市場流通の構造があります。
「安く仕入れられる」かではなく、「どんな人が、どんな土地でつくったのか」を知ることが、課題への入り口になります。

2. “共に食べる”場の設計者になる

料理は完成しても、それを食べる人がいて初めて「体験」になります。
共食(ともに食べること)は、孤独・貧困・分断をやわらげる力を持っています。
「誰と、どこで、どんな時間を共有するか」を設計するのも料理人の仕事です。

3. “つくる”から“伝える”へ視野を広げる

料理だけでなく、食の背景にある想いや課題を言葉・映像・イベントで可視化することで、社会との接点が広がります。
SNSやWebを活用して、食にまつわる“物語”を届けることも、食の可能性を広げる手段の一つです。


食で社会を変えるには、身近な一歩から

「社会課題に取り組む」というと、大きなプロジェクトのように感じるかもしれません。
しかし、目の前のお客様に“地元の素材のこと”をひとこと添えるだけでも、小さな変化を生む第一歩です。

  • メニューに1品、フードロス対策の料理を加える
  • 子ども向けの食育ワークショップを開催する
  • 地域の生産者と語り合う時間をつくる

こうした行動の積み重ねが、食の未来を変える力になります。


まとめ|料理人の手から、社会に届くストーリーを

食には、人を癒やす力、つなげる力、未来を変える力があります。
料理人が社会課題に向き合うことは、決して“特別な活動”ではなく、料理の延長線上にあるごく自然なことかもしれません。

地域の課題を知り、素材の背景に耳を傾け、誰かと食卓を囲む場をつくる。
そのすべてが、ストーリーのある“社会に届く料理”なのです。


たべるデザインでは、沖縄を拠点に、料理人や地域と連携した社会性のある食プロジェクトや商品開発を支援しています。

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