たべるデザインのコラム

モダン沖縄料理

地域の風景をメニューにする|食を通じたストーリーブランディングとは?

近年、「ストーリーブランディング」という言葉が飲食業界でも注目を集めています。
その中でも、地域の風景や文化を“食”で表現する手法は、ブランドとしての深みと共感を高める上で非常に有効です。

この記事では、「地域の風景をメニューにする」ことで、どのようにブランド価値を高められるのか。
また、メニュー開発におけるストーリーブランディングの具体的な考え方や進め方について解説します。


なぜ今、“物語のある食”が求められているのか?

スマホでどんな情報も手に入る今、消費者は単なる「美味しい」「映える」以上の体験を求めています。
とくに飲食業界では、背景にある“物語”や“思想”に共感して選ばれる時代が訪れています。

たとえば、「この野菜はどこで、どんな人が、どう育てたものか」「この料理はどんな土地の文化から生まれたか」。
こうした背景を知ることで、料理が単なる食事ではなく、**“記憶に残る体験”**に変わっていくのです。


「地域の風景をメニューにする」とは?

「風景をメニューにする」とは、料理を通して地域の自然・文化・人の営みを表現すること。

たとえば、以下のようなアプローチが考えられます。

  • 山の恵みをそのまま味わう「季節の在来野菜の一皿」
  • 地元の魚でつくる郷土料理の新たな解釈「地魚のマース煮 アクアパッツァ」
  • 祖母から受け継いだ味を再解釈した「モダンおばぁレシピ」

これらは、地域の“素材”と“歴史”、”文化”を編集し、料理として可視化する行為とも言えます。

こうした料理は、観光客にとっては「その土地を感じられるメニュー」となり、地元の人にとっては「忘れていた風景を思い出すきっかけ」になります。


ストーリーブランディングで差別化する

メニューを使ったストーリーブランディングでは、次の3つの要素がカギになります。

1. 地域資源の発掘

まずは、その地域ならではの食材・風習・言葉・季節感などを丁寧に拾い上げること。
ありふれたものでも、編集の仕方次第で魅力的な資源になります。

2. 文脈の編集

素材をただ使うだけでなく、なぜその食材を使うのか、どんな背景があるのかを言語化・視覚化します。
メニュー名、説明文、写真、器や空間の演出も含めて“伝える設計”が重要です。

3. 伝え方のデザイン

ストーリーは伝わって初めて価値になります。
料理として伝えることはもちろんですが、Instagramやホームページ、店舗のメニュー冊子など、伝える“場”ごとの適切な表現が必要です。


成功事例:風景を味わうレストラン

全国各地で、地域の風景をメニュー化して成功している店舗が増えています。

  • 新潟の山間で、雪解け水で育てた山菜をテーマにした「春の雪どけ膳」
  • 高知の郷土文化を伝える皿鉢(さわち)料理をモダンにアレンジしたコース料理
  • 沖縄で、昔ながらの薬草を使った「ぬちぐすい(命の薬)」をテーマにしたカフェメニュー

いずれも共通しているのは、土地の風景を“食”という媒体で表現し、それを体験として提供しているという点です。


メニュー開発は“物語づくり”

単なる商品開発ではなく、「地域をどう語るか」という視点でメニューを構築することで、お客様との深い接点が生まれます。

料理そのものの美味しさはもちろん重要ですが、そこに物語が加わることで、リピートや口コミ、SNSでの拡散といった“ブランド資産”が育っていくのです。


まとめ|風景と食をつなげるメニュー開発を

「地域の風景をメニューにする」というアプローチは、単なる地産地消とは一線を画します。
食材・文化・人・記憶を編集し、料理として表現することで、地域の価値を食を通じて発信できるのです。

飲食店や宿泊施設、地域ブランドにとって、ストーリーブランディングはこれからの時代の鍵となります。
メニューが「語る力」を持てば、お客様の心にも、地域の未来にも届いていき、それはいずれ”地域の誇り”に繋がります。
これからの飲食では、とても大切な視点だと考えています。


たべるデザインでは、地域資源を活かしたメニュー開発や食を通じたブランドづくりのご相談を承っています。
「土地の魅力をメニューで伝えたい」と考えている方は、ぜひ一度ご相談ください。

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